7月1日(金) 今回は陶器(土物)の器を使う上での下準備についてご案内いたします。 陶器(土物)の器の特徴は、陶磁器と違い土肌が荒く吸水性が高いということです。 おろしたての陶器(土物)の器を水に浸すと(特に粉引きの器などは)、水分を吸収した表面が一瞬斑模様に変色したりします。 ▲ 普通の状態(左) ▲ 水に浸してすぐの状態(右) そこで、おろしたての陶器(土物)の器を使う上での下準備としてよく言われるのが、『米のとぎ汁での煮沸』です。 この作業は、土肌が荒く吸水性の高い陶器(土物)の器の、土肌の隙間を埋める作業として行うものなのですが、一般的には『煮沸』にのみ重点がおかれ、その後の『乾燥』についてはあまり重要視して説明されることは少ないように思います。 でも、実際にはこの『乾燥』も大事な作業なのです。 『煮沸』した直後の器は、布で軽く吹き上げただけでも表面上は乾いたかのように見えます。 でも実際には、30分以上もお湯の中に浸かっていたわけですので、器の内部にはかなりの水分が吸収された状態なのです。 この状態で器を使い続けると、水を含んだスポンジのような状態で器を使うことになります。 これでは、折角『煮沸』して土肌の隙間を埋めたものが、固定されずに流れてしまうことになります。 その上、陶器(土物)の器は使う前に、しばらく水に浸しておいて使うのが基本とされていますので、余計に水分を吸収した状態で使うことになりかねません。 お料理に使う分には、これでもあまり問題は無いかもしれませんが、お湯飲みなど水分を入れて使う器では、かえって水漏れなどを引き起こす原因にもなりかねないのです。 おまけに水分を多量に含んだブカブカの器は、強度の面でも不安が出てきますよね。 そこで、土肌の隙間を埋めたものを固定させるためにも、『煮沸』の後の、充分な『乾燥』が必要となってくる訳です。 ある土物を扱う窯元さんでは、『煮沸』後の『乾燥』に4日ほど掛けて天日に干し、完全に乾燥させるといいます。 そうして完全に乾燥させた器は、水に浸しても、水分を吸収して起こる表面の斑模様の変化は見られなくなるといいます。 そこまでして、下準備された器は、油などによる色移りなどもし難くなり、強度も少なからず増すわけですね。 ただ一般の家庭で4日も掛け天日に干すことは大変かと思いますが、出来るだけ充分な乾燥をお勧めします。 |