■ 水無月豆腐 ■
『水無月豆腐』とは、この時期(6月)になると多くの日本料理店の献立にあがるお料理だそうです。
その謂れは京都でこの時期作られる、
『水無月菓子』という和菓子。
このお菓子は平安時代の宮中行事として旧暦の6月1日(現在の7月1日)に「氷の節句」として氷室の氷を取り寄せ口にする行事があり、それにならって(氷が手に入らない)庶民の間で氷をかたどった氷餅「水無月菓子」が作られるようになったのだそうです。
三角の形が氷室の氷を表し、氷室から切り出した際に小石のかけらが付いたままの姿を小豆で表現しています。
夏に向かい田に水を引く「水の(無)月」に、氷で暑気を払い小豆で邪気を払う・・夏の疫病、水の災厄を除くための儀式にちなんだ、日本らしい謂れのあるこの時期ならではの定番料理なのですね。
そんな
『水無月豆腐』に出会ったのは、富山にある割烹料理店
『いけす割烹 銀鱗』
こちらのお店の6月のコースメニューの献立にこの
『水無月豆腐』があります。
月変わりのコースメニューは三千円と5千円の2種類があり、
『水無月豆腐』は5千円のコースのデザートとして出されますが、単品料理としても300円でご注文頂けます。(6月の1ヶ月間だけしか味わえないデザートです。機会がある方は是非ご賞味ください♪)
一般的な
『水無月豆腐』はというと、『吉野葛』などを使い『胡麻豆腐』ベースで先付けなどのお料理として出される事が多いようですが、こちらの
『銀鱗』では今回はデザート(水菓子)としてお料理されています。
ヒンヤリと冷たく冷やしたデザートは、
『和三盆』を使った贅沢で上品な甘みと、きめ細かな滑らかな口当たりが、口に頬張った時にヒンヤリとまろやかで、まさしくこのお料理の謂れを思い起こさせるようでした。
抹茶のクリームソースとの相性もとても上品な和食らしいデザートに仕上がっていました♪
今回はたまたまこの時期の出張で、板長が6月の献立に頭を悩ませておられる時にタイミングよく訪問したお陰で、美味しいデザートの製作秘話と試食に立ち会う事が出来、とってもとってもラッキーでした♪(店々で独自に創意工夫されながら、新しい味・メニューが生み出されていくのだなと、料理の中の職人の世界に触れた気がしました)
お店の献立のメニューにはさりげなく「和三盆を使った水無月豆腐」としか書かれていません。。何も知らずに味わっていたとしたら、きっと「上品で和食らしいデザートだな・・♪」程度にしか感じなかったかもしれない、そんなお料理も。。こんな謂れがあって、だからこそこの時期にしか味わえない特別なお料理なのだと知った時に、お料理のありがた味も美味しさもなおさら感じられるような、そんな気がします。
さりげなく「水無月豆腐」としか書かれていないメニューを見て、もっともっと日本料理の奥の深さをアピールして欲しいなと思った隠者でした。。