2013年11月。。
相次ぐ食材の誤表記問題が明るみとなり、先日も百貨店の誤表記問題がニュースになりましたので、この機会にやきものの産地表示について少し記事にさせて頂こうと思います。
有田周辺の磁器製品の産地には、佐賀の
有田焼、
伊万里焼を筆頭に、隣接する長崎県の
三川内焼や
波佐見焼、といった産地があります。
でも、こういった産地の製品は『有田焼』の知名度とブランド価値の高さもあって、ひと昔前までは殆どの商品は『有田焼』として販売されていて、現在でも百貨店などではまだそのまま
『有田焼』として表記案内され販売されているところも多いと聞きます。
▲ 写真左は
『波佐見焼』の窯元
『陶房青』さんの『墨刷毛目』のカップ。
写真右は
伊万里『鍋島焼』の窯元
『巒山窯』さんの『黒線画』のカップ。
(いずれの製品もサイトには未出品の作品ですがお許し下さい)
『墨刷毛目』のカップは、弊社で形状もデザインも指定して制作をお願いし、手作りのロクロ成形で制作して頂いた作品で、お値段は一般価格で2800円。
『黒線画』のカップは、伝統工芸でもある鍋島独特の繊細な手描きが特徴の作品で、お値段は一般価格で4700円。
では、いったいどちらの製品が評価される商品なのでしょうか?
単純に『波佐見焼』と『伊万里(鍋島)焼』として比べれば、
『波佐見焼』は一時期の大量生産の雑貨・ギフト品的なイメージが残っていて、おそらく
伝統工芸的価値の高い『伊万里焼』の方がブランド価値も高く、産地だけで比べれば『伊万里焼』の方が評価される傾向にあるでしょう。
じゃあ産地の事を頭から外して、作品として比べたらどうなのでしょうか?
『墨刷毛目』のカップは
技術を必要とする手作りのロクロ成形で作られ、『黒線画』のカップは手作り風ではありますが
型を使った成型品で作られています。
器の成型の評価だけでみればおそらく手作りロクロで制作された『墨刷毛目』の製品の方が一般的には好意的な評価をされるのではないかと思います。
しかし、『黒線画』のカップは成型品ではあっても
他の産地には真似の出来ない、鍋島独特の繊細な絵付けの魅力があります。
何を伝えたいのかというと。。。
私個人的には、このどちらの製品もそれぞれに特徴を持っていて、それぞれに魅力的であり、私自身どちらの製品が好きとか素晴らしいとか、比べようがないと思っているのです。
手作りだから素晴らしい、型製品だからダメとか・・
有名な窯元・産地・高価だから素晴らしいとか、無名・安価だからダメとか・・
そういった基準ではなくて、製品そのものを見て・手に取って、その人がどう感じるのかが1番大事なのではないかと思うのです。
もちろん評価の基準には、
デザインであったり、
ブランドであったり、
技法であったり、
機能性であったり、さらに、
商品価格であったりとさまざまだと思います・・
だからこそ商品を売る側は、その
商品の参考になるような情報をキチンと丁寧にお客様にお伝えする事が1番大事なことで、それを間違った情報で案内したり偽装する事が悪いのであって、産地とかブランドとかは、最終的に商品の品質などを判断する時に必要な判断材料のひとつにしかすぎないと思うのです。
当サイトに出品している製品は、全ての商品に産地と窯元の表示をしており、必要に応じてその産地の製品の特徴や、制作技巧などの紹介をしております。
そして時には、制作者(窯元・作家)のバックボーンや、商品をセレクトした際の店主の思い入れなども含めてご紹介している場合もあります。
あとはお客様がその作品に触れて、その紹介・案内を見てどのように感じて下さるのか・・・
好みや評価の違いは百人百様・・
その中で商品のご紹介・ご案内を通じて、魅力的に感じて頂ける作品が少しでも生まれれば嬉しいな〜と思うのです。
※ 参考資料
『墨刷毛目ロクロカップ』を制作した際の関連記事
- 『墨刷毛目ロクロカップ』は、姉妹品『金泥釉カップ』の制作の際に、粉引の雰囲気を持つ製品を作りたいと思い制作して頂いた製品でした。
『鍋島黒線画ロクロ目カップ』の姉妹品
『鍋島黒線画フリーカップ』商品ページ