12月17日(土) ■ 『染付雲鶴図酒器』 ■ 染付けという藍の下絵で描かれています。。。 今日は、染付の器を主に制作されている 『正邦窯』さんで、染付の製作過程をレポートさせていただきました♪ 『正邦窯』さんは、有田の商社にもあまり知られていない窯元さんです。 その理由は、ある大手商社のお抱えの窯元であったため。。。そのころは百貨店でも有名な「○○吉」さんの商品なども手掛けられていました。 「染付」とは「コバルト」と呼ばれる「藍色」の原料を使って、釉薬の下に描かれる絵のことをいいます。 釉薬(器表面のガラス質のもの)の下に描かれていますので、その絵柄は剥がれたりする事はありません。 その逆に、釉薬の上から描かれる絵を「上絵」(赤絵や金など明るい色を使ったもの)と呼び、釉薬(器表面のガラス質のもの)の上から描かれているため、こちらは磨れたりして絵が剥げてくることがあります。 では、その「染付」の簡単な製作過程をどうぞ。。。 先のブログ「細工の職人」で紹介したような型の成型で作られた器の生地を、一旦窯で焼き「素焼き」状態になった生地に「コバルト」で絵付けを施していきます。 ← 「素焼き」に筆で絵付けをする様子。 「素焼き」の生地は水分を吸いやすく、筆が走らないので、熟れないと上手く描けません。 複雑な絵柄や難しい絵柄などは、鉛筆や瓢箪墨などで下書きをして、それをなぞって描く場合もあります。(下書きの絵は焼成すると消えます) ⇒ こちらが線描きの「染付」が描きあがった状態です。 これ以上描く必要がない時は、このまま釉薬を掛けて焼成する場合もあります。 ← そして、上の線描きの「染付」に更に手を加え、隙間を塗りつぶしたりする作業を施します。 この作業を「濃(ダミ)」といいます。 「濃(ダミ)」は線描きの絵の具を薄めた絵の具を使い、「水墨画」の要領で仕上げていきます。 使っている筆の太さも違うのが判りますか。 筆に絵の具をたっぷり含ませて、水滴を転がすようにして「濃」を書き上げていきます。 これは色むらを出さないための技術です。 塗りつぶす面積が広い場合は、更に太い筆を使って「濃」を仕上げていきます。 この「濃」の技術だけでも「伝統工芸士」の認定があったりするんですよ。 ⇒ こちらが、「線描き」と「濃」を施して仕上げた状態です。 「濃」を施すと、なんだか子供の失敗した塗り絵みたいですよね(笑) でも心配はいりません、焼成するとしっかり濃淡が出て奇麗に仕上がります。 ← そして、こちらはなんだと思いますか? 絵が描かれていないと思うでしょ? でも絵は描かれているんですよ。 これは、釉薬を掛けたところなのです。 徳利の下の瓶(かめ)に入っている液体が「釉薬(ゆうやく、または、うわぐすり)」です、絵付けされた器の上からから「釉薬」を掛けると、一旦絵柄は消えてしまいます、というよりも、絵の上に釉薬が掛かって、絵が隠れてしまうわけです。 知らない人が見ると、「絵が消えて勿体無い」・・・となるわけです(笑) ⇒ そして最後、窯で焼成されるとこの通り。。。しっかり「線描き」の絵と、「濃」の濃淡が奇麗に出ているでしょ♪ この絵の上には、ガラス質の釉薬がしっかり掛かっているので、絵は絶対に剥げないという訳です。 ← 『下絵(染付)』と『上絵(錦)』の違いが1番判りやすいのがこれ。 左の染付が下絵、焼成前の素焼きに絵を描いています。 そして右の錦が上絵、焼成した器のガラス質の表面の上に絵を描いて更に焼成(焼付け)しています。 色が違うだけでデザインは同じなのに、制作の行程は違うんですね。 なんとなく「染付」のイメージはご理解いただけたでしょうか。。。 最後に、以上のことを踏まえて、↓下の商品を見てみて下さい。 こちらの商品は、伊万里大川内山の「色鍋島」の商品です。 「色鍋島」の特徴である繊細な「鉄仙」の絵はもちろん手描きですが、注目はむしろスカイブルーに塗られたバックです。 ムラ無く塗られたスカイブルー・・・実はこれは「濃」で塗られているのです。 30cm角の大きなサイズでこの面積をムラ無く塗る技術・・・信じられない技術ですよね。 今ではこの技術も大変な作業らしく、こちらの商品は残念なことに製造中止になってしまいました。 (商品の詳細はこちらからご覧下さい) では、今回の職人レポートはこの辺で・・・次回をお楽しみに♪ |