◆ この物語では、数多くの地名が出てきます。
【 MAP 】のページを開いて地図と照らし合わせてお読みいただければ
物語の位置関係がよく解ると思います。
なお、地図に記載している地名は
赤色で記述しております
山間にある 『 有田 』 の町で、特にシンボル的な山・・・それが 『 黒髪山 』 です。
この山を中心に、取り囲むように 『 有田 』 と 『 伊万里 』 の町があります。
そしてこの山には、ある昔話が残されています・・・
それは、『 有田 』 の町が「陶磁器の里」として栄え始めるずっーと以前のお話です・・・
では、 『 黒髪山 の 大蛇退治』 の始まり 始まり・・・
それは、今から800年ほど昔の物語り・・・・
『
黒髪山』の麓の『
白川の池』(現在の
有田ダムの辺り)には大蛇が棲みついておりました・・・
この大蛇は『黒髪山』の『
天童岩(てんどういわ)』を七巻き半も巻きつけるほどの大蛇で、七俣(また)の角を振り、『黒髪山』を駆け回り、麓の村で田畑を荒らしたり、村人を襲ったり、挙句の果てには神社まで壊さんかと、大暴れを繰り返しておりました・・・
困り果てた村人達は、殿様に大蛇の退治をお願いしました・・・
早速、殿様は兵を挙げ大蛇退治へと向いますが、一向に大蛇は姿を現さず・・・仕方なく兵を引き揚げると、また暴れだすということを何度となく繰り返していました・・・
困った殿様は都に上り、天皇にこのことを申し上げ、そして天皇は一人の武者を遣わされます・・・
その武者こそ、弓の名手で八人張りの剛弓を引く『 鎮西八郎為朝 』(ちんぜいはちろう ためとも)でした。
為朝は兵を引き連れ、大蛇が現れるのを待ちますが結局、大蛇は姿を現すことはありませんでした・・・
殿様と為朝は一旦兵を『黒髪山』の麓に引き揚げ大蛇退治の策を練ります・・・(この場所が
『評定場』と呼ばれ今では有田ダムとなっています)
そのうちある者が、「姫を使って大蛇を誘き出せば・・」と案をだし、それに従い殿様は「人身御供を申し出る者には、褒美は望み通り」とおふれを出しますが、結局、誰一人申し出る者はありませんでした・・・
その頃、高瀬(現在の武雄市西川登町)という山里に『万寿』と『小太郎』という仲の良い姉弟が住んでおり、亡き父は元々、立派な手柄も立てた武士でありながら訳あって没落し、今や病床の母をいたわりながら母・姉弟で貧しい生活を営んでおりました。
その折、「人身御供」のおふれを目にした『万寿』は家族のために自らが生け贄になることを決心します・・・
もちろん『小太郎』は引き止めますが・・・もはや『万寿』の決心を変えることは出来ませんでした。
そうして、『万寿』を「人身御供」として大蛇を誘き出すため、白川の池に桟敷が作られました。
「人身御供」となるために
『万寿』は最後の身支度をしました・・・
髪を洗い、化粧をし、十二単衣の着物を着飾り・・・・
(このとき、髪を洗い、水鏡で化粧をした川が『
鬢毛(びんげ)川』と呼ばれ、現在でも
『菖蒲の隠者』の店舗横を流れています)
美しく着飾った『万寿姫』は白川の池に作られた桟敷に座り、大蛇が現れるのを待ちました・・・
その周りでは、『為朝』をはじめとする六千人もの兵が弓を手にして、大蛇の出現を今か今かと待っていました・・・
その時、雲間からピカッと金色の閃光が走り、雷が響き渡ったかと思うと・・・
急に不気味な風が吹き、池には小さな波に続いて、山のような大波が打ち寄せ・・・
遂に、七俣の角を振りながら鱗を逆立てた大蛇が、波の中から現れました・・・・
この様子をじっと見ていた殿様は、
少しも慌てず矢を放ち・・
矢は大蛇の眉間に突き刺さり・・
怒り狂う大蛇が、口から火を噴き桟敷の上の『万寿姫』を一口に飲み込もうとしたのでした・・
そして、この時とばかり『為朝』は・・・
八人張りの大きな弓に 長い矢をつがえ、
大蛇の背中をめがけて矢を放ちました・・・・
さすがの大蛇も二本の矢を打ち込まれ、池の中へと姿を隠してしまいます・・・
すると今度は、空に稲妻が光り、山も谷も崩れるほどに天と地が動き出しました・・・
暫くたって、大蛇は火を噴きながら逃げ出しました・・・・
周りを固めた六千余りの兵は、少しも恐れず、どっと声を張り上げ、次から次へと矢を射かけました・・・
(この時、兵の放った矢が大蛇の鱗に跳ね返り、麓の村の民家の戸に刺さったことからこの地を『
戸矢(とや)』とし、現在も有田の地名として残っています)
そして大蛇はとうとう谷底(現在の有田町泉山
年木谷)へと転がり落ちてしまい・・・丁度そこを、梅野の座頭が通りかかり・・・短刀で大蛇の喉首を切って落とし、遂にとどめを刺したのでした・・・
(大蛇が息絶えたところを、『蛇頭山』と呼び現在も地名として残っています)
大蛇退治を無事成し遂げて殿様は、早速お祝いの酒盛りを開きました・・・
家来たちは、その宴席に酒樽の大樽、中樽、小樽を差し上げました・・・
(この時の『
大樽』、『
中樽』、『小樽』は、地名として今も有田に残っています。
『菖蒲の隠者』店舗は『中樽』です)
そして、この物語の1番の主役、『万寿姫』ですが・・
殿様からの沢山の褒美をいただき
その後、幸せな結婚をしたそうです・・・
弟『小太郎』は父の跡継ぎとして侍になることを許され高瀬の村を褒美に与えられました・・・
ここで紹介した以外にも、『有田』の町には今もこの物語を元にした数多くの地名が残っているのです・・・
おしまい・・・おしまい・・・