12月7日(水) (この記事は2005年に紹介した記事を、2010年にレポートした『磁器成形方法の種類』の記事と共に、改めてアップし直しました。) ■ 『美形朴碗』 ■ 美しい形をしていると思いませんか。。。。 今日は、新商品の 『美形朴碗』 を提供していただいた『大拓窯』さんで、器の成型過程をレポートさせていただきました♪ 『大拓窯』のご主人は、有田の有名大手製磁社で、細工の一級技能士として勤めておられました。 定年後ご家族で独立された訳ですが、若い頃から培ったその伝統の技は今でも健在です♪ その細工士としての技術の一端を、「茶器」の成型過程で教えていただきました。 「機械ロクロ」で成型する行程です。 ← 「機械ロクロ」の簡単なイメージ。 「型」の中に陶土を入れヘラで成型してゆきます。 今回はこの「型」を使って、まず「湯冷まし」を成型していただきました。 ▼ まず、「型」を固定するロクロの台座に作る器の「型」をはめ込み固定します。 ▼ 「型」を固定したロクロを回転させ、陶土を入れます。 ▼ 「型」に入れた陶土にヘラを当て、成型していきます。 ▼ 「機械ロクロ」で成型されたすぐの状態です。 まだ型に張り付いていますが、粘土が乾き水分が抜けていく過程で、収縮していくことで型と粘土の間に隙間が出来、型から外れるようになります。 ▼ 「型」から外れた状態です。 ← この形からどうやって「湯冷まし」になっていくか不思議ですよね? 生地が柔らかいうちに、「湯冷まし」の形に成型してゆきます。⇒ 「なめし布」を当て、少しずつ変形させます。 形を奇麗に整えて「湯冷まし」の形にしてゆきます。 この形状も、乾いてゆく過程で少し戻ってゆきますので、少し強めに変形させます。 ← 左の形から、変形させ(中央)、乾かしたものが1番右の物です。 少し形が戻っているのと、収縮してすこし小さくなっているのが判ると思います。 最後の仕上げは、高台の削り出しです。 しっかり乾燥させた生地(1番右の状態)の高台を丁寧に削ってゆきます。⇒ 次に急須(宝瓶)の制作過程をご紹介。 ← この段階になるまでは、上の行程でなんとなくイメージできると思いますので、この続きから・・・ まずは急須の口を付けなければなりません。▼ 柔らかく溶かした陶土を使って、口を接着してゆきます。 竹べらを使って内側からも丁寧に接着してゆきます。 ▼ 次に蓋を細工してゆきます。 急須のサイズに合わせ、キッチリと収まるように渕を削ってゆきます。 蓋のツマミと蓋の表面を削って、シャープで上品な形状に仕上げてゆきます。▼ ▼ もちろん、高台も丁寧に細工されています。 ▼ はいこの通り、キッチリと蓋のあった急須が出来上がりました♪ ▼ 右が焼き上がった商品。 生地の最初の段階から比べると、1割3分ほど縮むのだそうです。 今回ご紹介したのは、数ある成型方法の中のひとつです。 こうやって見ると、ひと言で成型の製品と言っても、手作業の部分が多いことが良く判っていただけると思います。 これだけの職人さんの手が入っているわけですから、ロクロなどの手造り成型に勝るとも劣らない、上品な形状が生れるわけですね。 ⇒は「大拓窯」さんの細工場(さいくば)です。 手前から3台「機械ロクロ」のロクロ(型のサイズに合わせて3つのサイズがあります)があり、1番奥のロクロは、仕上げなどの削り細工のためのロクロが設置されています。 この職人の仕事場から 『美形朴碗』は生れてくるんですね。。。 ★ 関連記事 - 磁器成形方法の種類 - 型打ち成形の技法 - 排泥鋳込み成形の技法 - 圧力鋳込み成形の技法 - ゴッドハンド『ロクロの職人』(ロクロ成形の技法) |
12月17日(土) ■ 『染付雲鶴図酒器』 ■ 染付けという藍の下絵で描かれています。。。 今日は、染付の器を主に制作されている 『正邦窯』さんで、染付の製作過程をレポートさせていただきました♪ 『正邦窯』さんは、有田の商社にもあまり知られていない窯元さんです。 その理由は、ある大手商社のお抱えの窯元であったため。。。そのころは百貨店でも有名な「○○吉」さんの商品なども手掛けられていました。 「染付」とは「コバルト」と呼ばれる「藍色」の原料を使って、釉薬の下に描かれる絵のことをいいます。 釉薬(器表面のガラス質のもの)の下に描かれていますので、その絵柄は剥がれたりする事はありません。 その逆に、釉薬の上から描かれる絵を「上絵」(赤絵や金など明るい色を使ったもの)と呼び、釉薬(器表面のガラス質のもの)の上から描かれているため、こちらは磨れたりして絵が剥げてくることがあります。 では、その「染付」の簡単な製作過程をどうぞ。。。 先のブログ「細工の職人」で紹介したような型の成型で作られた器の生地を、一旦窯で焼き「素焼き」状態になった生地に「コバルト」で絵付けを施していきます。 ← 「素焼き」に筆で絵付けをする様子。 「素焼き」の生地は水分を吸いやすく、筆が走らないので、熟れないと上手く描けません。 複雑な絵柄や難しい絵柄などは、鉛筆や瓢箪墨などで下書きをして、それをなぞって描く場合もあります。(下書きの絵は焼成すると消えます) ⇒ こちらが線描きの「染付」が描きあがった状態です。 これ以上描く必要がない時は、このまま釉薬を掛けて焼成する場合もあります。 ← そして、上の線描きの「染付」に更に手を加え、隙間を塗りつぶしたりする作業を施します。 この作業を「濃(ダミ)」といいます。 「濃(ダミ)」は線描きの絵の具を薄めた絵の具を使い、「水墨画」の要領で仕上げていきます。 使っている筆の太さも違うのが判りますか。 筆に絵の具をたっぷり含ませて、水滴を転がすようにして「濃」を書き上げていきます。 これは色むらを出さないための技術です。 塗りつぶす面積が広い場合は、更に太い筆を使って「濃」を仕上げていきます。 この「濃」の技術だけでも「伝統工芸士」の認定があったりするんですよ。 ⇒ こちらが、「線描き」と「濃」を施して仕上げた状態です。 「濃」を施すと、なんだか子供の失敗した塗り絵みたいですよね(笑) でも心配はいりません、焼成するとしっかり濃淡が出て奇麗に仕上がります。 ← そして、こちらはなんだと思いますか? 絵が描かれていないと思うでしょ? でも絵は描かれているんですよ。 これは、釉薬を掛けたところなのです。 徳利の下の瓶(かめ)に入っている液体が「釉薬(ゆうやく、または、うわぐすり)」です、絵付けされた器の上からから「釉薬」を掛けると、一旦絵柄は消えてしまいます、というよりも、絵の上に釉薬が掛かって、絵が隠れてしまうわけです。 知らない人が見ると、「絵が消えて勿体無い」・・・となるわけです(笑) ⇒ そして最後、窯で焼成されるとこの通り。。。しっかり「線描き」の絵と、「濃」の濃淡が奇麗に出ているでしょ♪ この絵の上には、ガラス質の釉薬がしっかり掛かっているので、絵は絶対に剥げないという訳です。 ← 『下絵(染付)』と『上絵(錦)』の違いが1番判りやすいのがこれ。 左の染付が下絵、焼成前の素焼きに絵を描いています。 そして右の錦が上絵、焼成した器のガラス質の表面の上に絵を描いて更に焼成(焼付け)しています。 色が違うだけでデザインは同じなのに、制作の行程は違うんですね。 なんとなく「染付」のイメージはご理解いただけたでしょうか。。。 最後に、以上のことを踏まえて、↓下の商品を見てみて下さい。 こちらの商品は、伊万里大川内山の「色鍋島」の商品です。 「色鍋島」の特徴である繊細な「鉄仙」の絵はもちろん手描きですが、注目はむしろスカイブルーに塗られたバックです。 ムラ無く塗られたスカイブルー・・・実はこれは「濃」で塗られているのです。 30cm角の大きなサイズでこの面積をムラ無く塗る技術・・・信じられない技術ですよね。 今ではこの技術も大変な作業らしく、こちらの商品は残念なことに製造中止になってしまいました。 (商品の詳細はこちらからご覧下さい) では、今回の職人レポートはこの辺で・・・次回をお楽しみに♪ |
10月04日(水)
ネットショップでは、購入いただいたお客さまを中心に、『染付』と『錦』の違いを尋ねられることが時々あります。 先日もお問い合わせを頂いたお客様から、同じご質問を頂きましたので、折角の良い機会ですので『独り言』のコーナーで、ちょこっとご説明することにしました。。。 まずは『陶磁器』の製造工程からのお話になりますが、 まず、陶土から成型された器の生地は、一旦『素焼窯』で焼成され、軽く焼き締められ『素焼(すやき)』と呼ばれる状態の製品になります。 ← は、『素焼窯』に入れられる前の状態のもので『生(なま)生地』と呼ばれますが、この後900度ほどの窯で焼成され、『素焼生地』となります。 この素焼の生地に、なにも絵柄を施さず 『釉薬』 (ゆうやく・もしくは、うわぐすり) を掛け、1300〜1400度ほどで焼成 (『本窯』と言います) したものが、 『釉薬』 の種類により 『白磁』 『青磁』 『古染釉』などと呼ばれます。(こちらは白磁の製品です⇒) では、ここで一旦 『本窯』 で焼かれる前の 『素焼生地』 に戻っていただき、『染付』のご説明ですが、『染付』の絵柄は、この素焼きの状態の生地に絵が描かれて行きます。↓ 『染付』は、『呉須(ごす)』と呼ばれる、コバルトなどを原料に使った絵の具で 『素焼生地』 に絵付けをして行きます。 『素焼生地』 にはまだ 『釉薬』 が掛かっておりませんので大変水分を吸収しやすく、そこに描く『染付』はとても熟練の技術が必要となります。 この『染付』の技法については、『染付の職人』のページでも紹介しておりますので、そちらも参考にしてください。 この『染付』で描かれた代表作が、こちらの 『染付祝美形皿』 です。⇒ この他にも 『染付芙蓉手岩花鳥皿』 や、『陶房青』さんの『古染野バラ』シリーズなども『染付』で描かれた作品です。 このように『藍』の色で仕上がるのが『染付』の特徴ですが、その色合い、線のタッチ、絵柄、技法、などは窯元や産地などによっても、特徴にかなりの違いなどがありますが、その辺りはまた別の機会にしたいと思います。 このようにして焼かれた『染付』は、『素焼生地』に直接描かれていますので、その絵柄の上には『釉薬』が掛かっていますので、『釉薬』が『染付』のコーティングとなって、絵柄が剥がれたりする事は決してありません。 このように、釉薬の下に絵柄を描くことから、『染付』のことを 『下絵』 とも言います。 『染付』は、このように絵柄の上から液体の『釉薬』を掛けて焼いていますので、その絵柄には『釉薬』による『滲み』や『流れ』などの影響が少なからずの表れてしまいます。 (習字に水を落とした時をイメージしていただくと解りやすいかと思います) こちらでは、その『滲み』や『流れ』などを、絵柄が『動く』などと表現したりしますが、その『動き』が顕著に現れる部分は、器の形状によって『釉薬』の溜まり易い角の部分や底などに『滲み』が出やすく、器の立ち上がり・側面などには『流れ』が出る場合があります。 また、使用する『釉薬』によっても、『動き』の出やすい『釉薬』と出にくい『釉薬』があり、それを使い分ける事で、器の表情に味を出したりする事もあります。 その代表的な作品が← 『染付濃ザクロ茶付』 で、こちらは意図的に絵柄の動きやすい『釉薬』を使って作っています。 ただ、この動き具合も『釉薬』の状態や環境などで変わってきますので、焼成の度に絵柄の動き具合に違いが出てしまい、毎回同じように揃えるとなると中々難しい面があります。 ちょっと『染付』の説明で長くなってしまいましたが、 次に『錦』のご説明ですが、 ← 今度は一旦『素焼生地』に『白磁』などの『釉薬』を掛けて『本窯』で焼成した状態の『白磁』の器をイメージしてください。 『錦』 の絵柄は、この『本窯』を済ませた状態の器に、赤、緑、黄、青、金、などの色鮮やかな『錦絵の具』を使って描かれた作品のことを言います。 『錦』を定着させるため、約800度ほどの『錦窯』で再度焼かれますので、『染付』の作品よりも少なくとも1回多く焼成されることになります。 もちろん『本窯』を済ませた状態の器なので、『錦』 を施さなくても、『白磁』の器としても製品になります。 この 『錦』 で描かれた代表作が、こちらの 『夢ロックカップ 赤絵万歴』 の作品で、赤、緑、青の3色を使い仕上られています。⇒ 『染付』に比べると、ガラス質の表面がツルツルした状態のものに絵を描いて行きますので、筆の運び具合なども『染付』のそれとは感触がかなり違ってきます。絵の具の違いもありますので、『染付』を得意にされている窯元でも、『錦』の絵付けは外注に出したりする場合が多く、有田には『赤絵(錦)屋さん』と呼ばれる『赤絵』専門の工房が沢山存在しています。 『錦』 で描かれた作品の特徴としては、一旦『本窯』で焼かれ、半完成品の状態の器に、『釉薬』の上から絵が描かれていきますので、表面を手で触ると絵柄が『釉薬』の上に乗っているのが判り、特に赤の錦はザラザラした肌触りを覚える事もあります。 また、ガラス質の『釉薬』の上に描かれていますので、長い年月で絵柄が剥がれてきたりします。 このように、釉薬の上に絵柄を描くことから、『錦』のことを 『上絵』(うわえ) とも言います。 また、『錦』の違う呼び名で『赤絵』や『色絵』などと呼んだり、『金』の錦を施した作品には『金彩』と呼ぶ場合もあります。 ← こちらが『染付』と『錦』の違いが良く判る作品ですね。 同じ形状、仕様の器でも、製造工程にはかなりの違いがあることをお解かり頂けたのではないでしょうか。 窯で焼かれた回数で言うと、 『染付』は『素焼窯』『本窯』の2回、 『錦』は『素焼窯』『本窯』『赤絵窯』の3回焼成されています。 以上が『染付』と『錦』の違いでしたが、もうひとつ覚えていただきたいものが、 『染錦』(そめにしき)です。 もう大体のお察しは付くかと思いますが。。。 『染付』を描き『本窯』で仕上た作品を、その上から『錦』の絵付けを施し完成させるのが『染錦』という訳です。 その『染錦』の代表的な作品がこちらの 『鍋島野菜尽し8寸皿』 です。 もう、『染付』がどの部分で、『錦』がどの部分かはお解かりですよね? こちらの作品は、『色鍋島』を代表する窯元の作品で、見ての通り、絵柄の繊細な筆の線や正確さなどは、『染付』『錦』ともに狂いが無く、まさしく伝統工芸の技術のなせる業ですよね。 こういった大切な、そして貴重な技術は、大事に後世へと受け継いでいってもらいたいものです。 ■ では、最後におさらいですが、 ←この『白磁』の作品 『美形朴碗』 を再加工して作れる作品は、『染付』と『錦』の、どちらの作品でしょうか? 『錦』 の製品には再加工が出来ることが解りましたか? もちろん『染付』への加工は出来ませんよね。 たとえば、 『美形朴碗』 に、こんな 『山葡萄』 ⇒の『錦』を施す事も可能なんですよ♪ |
9月16日(土) ■ 『古代朱無骨椀』 ■ 無骨なスタイルに拘ってみました。。。。。。。 今回 『古代朱無骨椀』 の製作をお願いしたのは、福井県鯖江市の越前漆器の製造メーカーさん。 『菖蒲の隠者』の本業、業務用和食器の販売で、主に「漆器」を取り扱う際にお願いしていたメーカーさんです。 お父様が 『木地師』で、以前は『木地挽き』の伝統工芸士さんでもありました。 (なぜ以前としているのかは、伝統工芸士にも登録料など色んな負担があるようで、制度に疑問を感じて辞退されたとの事でした。 日本伝統の大事な技術で、中々後継者が育たない環境にあって、もう少しこのような伝統工芸に対しての優遇措置も考えてもらいたいものですね。 誰もが簡単に手にしようと思っても出来ない技術なのですから。。。 今では、越前漆器業界でも『木地師』さんは4、5人しか残っていらっしゃらないようです。。) 今回は、この『木地挽き』の職人の技を紹介させていただきます♪ 木製の『漆器』の『木地』は、大きく分けて2種類の形状に分けられます。 お盆や重箱などの『角物』と、お椀や茶托などの『丸物』と呼ばれる物です。 今回の製品はお椀ですので『丸物』ということで、その製造過程をご紹介します。 ■ まずは材料となる木材から。。 主に欅(けやき)、水目櫻(ハンサとも呼ばれます)、栃(とち)、などの木が使われるようですが、今回は硬めの木材の欅(けやき)を使っています。 この木を使って『木取り』をしていく訳ですが、一般的に『丸物』には『縦木』と言われる材料の取り方をします。 『丸物』に『縦木』を使う主な理由は、変形しやすい『横木』に比べ、お椀にしたときに歪んだり変形しにくいためです。 『縦木』はまず丸太を輪切りにした物から、木目の芯をはずして『木取り』をしていきます。 『木取り』の際に、木目の芯をはずす理由は、芯を使うと後でヒビ割れなどの原因になるためです。 また木目の芯は、日当たり加減で必ず中心からずれていますので、丸太のサイズとお椀のサイズなどを考慮し、必要となる材料を有効に『木取り』をしていきます。 ⇒ 実際の『木取り』です。 輪切りにした面に、必要な『粗挽き』の大きさの印を墨で付けていきます。 芯をはさんで対角にしか取れないのでφ12cmお椀の場合、削っていく分を考慮すると最低でも直径で30cm位の太さの木が必要になります。 例えばφ15cmのお椀になると倍以上の40cm以上の木の太さの物が必要となる訳です。 ← まずは大雑把に鉈などでカットして。 旋盤でおおまかなお椀の形まで削って▼ 『粗挽き』の完成です。 材料の材木さえあればすぐにでも加工できそうですが、実際には木をしっかり乾燥させる作業もありますので、乾燥などの時間も考慮すると早くても3ヶ月は掛かる作業になります。 以上ここまでが、『木工所』さんでのお仕事。。。 ■ 木地挽きの職人 そしてここからが、『木地師』さんの出番です。 ロクロを使って削り上げていくため『ロクロ師』とも呼ばれるのは、焼物の成型にもちょっと似ていますね♪ 当然木地挽きには熟練の技術が必要とされます。 木地挽きの一番の難しさは失敗が出来ないという事です。 削りすぎた物はやり直しがきかないので、細心の注意を払いながらの根気と集中力が必要な作業です。 また木地の仕上がりがいいと最後の工程までがきれいに仕上がり、次ぎの職人さんも良い仕事ができると言います。 ← こちらが『粗挽き』の状態で、 デザインに忠実に削りだして行きます。▼ (こちらは通常のお椀のデザインです。今回の工程の説明はこの通常のお碗の木地挽きの過程でご紹介しております) 木地は『粗挽き』の肉厚分は自由に色んな形や大きさに削る事ができます。 今回の 『古代朱無骨椀』 もこの肉厚を活かして『肩張り』のデザインを施して貰っています。 この肉厚を活かした微妙なデザインが、木製品にしか出来ない利点で、木合や樹脂製品など成型物の製品には出来ない技です。 ■ 次に削る工程を見ていくと、まず削るためには道具が必要です。 木地を仕上げていく時のカンナは何種類かのカンナを使い、そのカンナ作りも『木地師』さんの大事な仕事です。 自分の思うようなカンナが作れるようになるまでに5年は掛かるそうです。 使う道具作りが大事というところも、焼物の『細工人』さんと同じですね。 ■ 切れ味にまで気を配って、入念に手入れした道具を屈指して、いよいよ削りに入っていきます。 ロクロに『粗挽き』の木地を固定して、まずは外側から削っていきます。 最初は一気に荒くカンナを入れ、形が整ってきたら、より慎重に削り上げていきます。▼ 簡単そうに言っていますが、職人さんの熟練した技術があるからこそ簡単に見えるだけで、実際には木の堅さや粘り具合など、長年の勘でカンナの力の入れ具合やスピードなど。。目には見えない微妙な加減で仕上げられていきます。 ⇒ 外側の削りがほぼ完成した状態で、形が合っているか確認します。 ← 最後に小刀をあてて仕上げます。 仕上げが上手いと、次ぎの工程の職人さんの仕事もきれいに進みます。 ⇒ 外側の削りが終われば、同じ工程で内側を挽いていき、デザイン通りの規格に仕上げていきます。 ← そうして完成した『丸物白木地』がこちら 右の『粗挽き』がダイエット前。。。 左がダイエット成功♪ という感じでしょうか♪ こうして『お椀』の木地の成型過程を見ていくと、まるで『焼物』の成型過程を見ているような錯覚を覚えます。。。 ■ 細工の職人 ← 『焼物』の『細工士』さんによる成型過程も紹介していますので、興味のある方は是非見比べてみてくださいね。 ■ 以上のような工程を経て出来た、今回の 『古代朱無骨椀』 の木地がこちら。 一般的に全体に丸みのある『お椀』に対し、『お椀』の下の方に『面取り』を施し、角を持たせて見ました。 ⇒ 底から見るとこんな感じです。 白い部分が『お椀』の断面図です。 渕は薄く、下に行くに従って肉厚になり、『肩張り』の部分は特に肉厚になります。 外見は外側は角張っていますが、内側は普通の『お椀』と変わらない曲面になっています。 この部分が木製でないと出来ない技で、成型物の製品では、肉厚の部分の再現が難しく、内側も外側と同じような角のある形状になってしまいます。 更に『肩張り』の底の方の『面取り』にも、少しカーブを付けて削っていただきました。 この少しのカーブが、角のシャープさを増し、また、手にした時の指の掛かりを良くしています。 ■ 塗りの職人 『木地』が出来上がれば、次は塗りの工程です。 『塗り』の技法にも色々な種類があるようですが、今回出品の 『古代朱無骨椀』 は、『古代朱』や『銀朱』とも呼ばれる、ちょっと派手さを抑えた「朱」の『漆(うるし)』を使い、『目はじき塗り』 という『塗り』の技法で仕上げていただきました。 『目はじき塗り』 の特徴は、器の『木地』の木目が『漆(うるし)』表面に残って景色になることです。 『木地』自体に直接『漆(うるし)』を塗り、『木地』に充分『漆』を染み込ませていくことで、『漆』の表面に木目が浮かび上がります。 この 『目はじき塗り』 の利点は、通常の塗りに比べると弾力性に富み、『木地』と『漆』の定着度が強く、『木地』から『漆』が剥がれにくいという点です。 その代わりに、衝撃などで窪みが付きやすいというデメリットもあるため、材料となる『木地』には硬めの木材の『欅(けやき)』を使用することで、そのデメリットを抑えています。 『塗り』の工程にもかなりの手間が掛かっています。 『刷毛』を使って、丁寧に手で塗り上げていきますが。。。 (⇒画像は、高台部分を「黒」の「漆」で塗っている所です) ?@ 下塗り まず1回目の『塗り』では、『木地』に直接『漆』を塗り、染み込ませて行きます。 『木地』自体の持つ木材の毛羽立ちなどが残りますので、塗り終わって数日掛けて乾燥させる間に『研ぎ(とぎ)』という作業で表面に磨きを掛け、毛羽立ちなどを取り除きます。 (先の「木地挽きの工程」で木地の仕上がりがいいと、次ぎの職人さんも良い仕事ができる、というのはこのようなところからも伺えますね) ?A 中塗り ?@の作業を終え『漆』が乾いた状態で、その上から再び『漆』を塗り込んでいきます。 この時1度に全体を塗ることは出来ませんので、器の、 ◆ 外側の塗り ⇒ 乾燥 ⇒ 内側の塗り ⇒ 乾燥 ⇒ 高台の塗り ⇒ 乾燥 の順番で塗っていきます。 (単純に1工程の塗りでも、器の場所ごとに塗り分けていくので、実際には大変な日数を要している訳ですね) こうして全体を塗り終えた段階で、再度『研ぎ』の作業で表面を磨き上げます。 ?B 上塗り 同じように?Aの作業を再度繰り返しながら、最後に『仕上げ』といわれる作業で、『漆』の表面に浮き上がってきた、ゴミなどを丁寧に取り除き完成させます。 このように最低3回の塗りの工程を経て、ようやくやっと完成です♪ 材料の段階からすると大変な工程で、製作にもかなりの時間と労力が必要となるのがお解かり頂けるかと思います。 実際この 『古代朱無骨椀』 の製作も、計画したのは1年前のことで、昨年末の発表を目指したのですが、日程的に無理があったため、1年を経てやっと今回の発表となりました♪ ※ あまり大量な在庫を抱えることが出来ないので、在庫切れの場合は、再入荷にかなりお時間を要する場合がございますので、予めご了承下さい。 ■ この『お椀』の形状は、数年前に有田でプロジェクトされ、国営TVでも取り上げられ話題となった『究極のラー○ン鉢』と似た形状ですが、『漆器』の『お椀』では、昔から良く使われていた形状です。 『究極のラー○ン鉢』も、こういった『お椀』の形状を参考にデザインされたのかもしれませんね。 |
4月17日(日) 『菖蒲の隠者』でも大人気♪ 『陶仙房』山本英樹 さんの作る作品(碗類)を手にしたときに感動を覚えること。。。 それは、手に持った瞬間に「なんてしっくり馴染むのだろう?」と感じること・・・ |
あまりに持った感じが良いものですから・・・ どうしてだろうとその秘密を隠者なりに考えてみました。。。 そして行き着いた結論は、器の重さのバランス(重心)にあるのでは、ということでした。 一般的に器の重心が上にある器は持っても不安定ですし、持ちにくい感じを受けてしまいます。。。 その点『陶仙房』の碗は下に行くに従って肉厚に作られています、そのせいで重心が下にあるのですが、その重心の取り方が他の器と比べてもかなり下なのです。 その重心のせいで、『陶仙房』のお碗は転がる(倒れる)ことがありません。 このように指で倒そうとしても『起き上がりこぼし』のように倒れずに戻ってくるのです。。。 どこかで『陶仙房』の器に出会う機会がある時は、是非器を手に持ってみて下さいね。。。。♪♪ |